いろいろ立て込んでいてそれどころではなかったのだが、勢いよく仕事に穴を開けて「PostgreSQL Conference 2008」に行ってきた。特定のオープンソースプロダクトが、有料でカンファレンスを開くなんて、結構すごいことなんじゃないだろうか。

今回、セッションは「テクニカル」「エンタープライズ」「コミュニティ」「チュートリアル」の4つに分かれている。同僚はテクニカルセッション、私はエンタープライズセッションと分担して受講してきた。

  • 基調講演 * PostgreSQL’s Path to the Future
    (PostgreSQL開発コアメンバー/EnterpriseDB Bruce Momjian 氏) * Postgres開発のえらいひと。不勉強で知りませんでした。 * やさしく、そして信念に基づいて、Postgresの今後についてのビジョンを語ってくれた。 * その信念に則って開発が進むならPostgresの未来は明るいんじゃないか。 * 信念のままに仕事できていいな。 * オープンソースの行方 – Sun の Open Source Database 戦略 –
    (Sun Microsystems 伊藤 敬 氏) * Sunはオープンソースコミュニティにこれだけコミットしてますよアピール。 * まぁ提灯。 * でも「ビジネス的にはどうかと思いますが」とか「日本の商習慣には馴染まない」とか正直ベースの話も。
    • エンタープライズトラック
      • pgpool-IIの今と今後の展望
        (SRA OSS,Inc.日本支社 浅羽 義之 氏)
        • pgpool-IIによるレプリケーション、オンラインリカバリなどの解説とデモ。
        • pgpool-IIは同期レプリケーション、更新性能は1/2まで落ちる。
        • slony-Iは非同期レプリケーション、更新性能は低下しない。
        • ノードの状況を監視、ウォームスタンバイのノードと入れ替えたりオンラインリカバリしたりできる。
        • pgpoolAdminがすごく便利そう。
        • オンラインリカバリを使わなければ「pgpoolサーバのクラスタリング」も可能。
        • 説明はさらっと流されたがコネクションプーリングも重要。
        • 一番実務的で役に立つセッションだった。
        • でも分類としては「テクニカル」じゃないの?
        • slony-Iとの連携を含めた検証と導入をしなくては。
      • Heartbeat+DRBD+PostgreSQL構成の本番運用への適用 – SaaS 型の輸配送管理サービス「ASPITS」の紹介 –
        (セイノー情報サービス 福島 克輝 氏)
        • GPS連動の移動体管理ソリューションにPostgresを使っている。
        • DRBDでフェイルオーバークラスタ(待機系)とデータをミラーリング、障害発生時は25秒程度で切り替わる(ヘルスチェックが10秒間隔、切り替えに15秒程度)。
        • 「可用性の追求」(ダウンタイムを短縮すること)にはあまり取り組んだことがないので、勉強にも刺激にもなった。
        • スピーカーが「いやー大変だったんですよ」と楽しそうな表情で発表するのが印象的だった。
      • PostgreSQLを商用システムに適用した5年間を振返って ~利用者の立場から PostgreSQL への期待~
        (NTTデータ 渡部 広志 氏、矢作 浩 氏)
        • Postgresは5年前から安心して使えトラブルもなかった。
        • 標準でレプリケーション機能が提供されていないのが残念。泣く泣くMySQLを使った事例もあった。
        • 自前でサーバ / ディスクの分割を実装したり、いろいろ頑張った。
        • 昔頑張って実装した機能がいまや標準機能になってるのが嬉しい。
        • Vacuum Fullは「行うかどうか」まで考えて設計しないとパフォーマンスに大きな影響が出る。
        • これからも「あったらいいな」機能がどんどん実装されたらいいな。
        • …という過去を振り返っての思い出と今後への希望を語るセッションだった。
        • ところで「PostgresForest」にはあまり触れなかったが、どうなんだろう。要調査。
      • PostgreSQL 大規模 DWH 事例 – Sun DW GreenplumDB –
        (Sun Microsystems 中村 完 氏)
        • 大規模システム向けDWH(Data Ware House)専用のプラットフォーム。
        • Sun Fire X4200(マスタ)にX4500(セグメント)を複数台カスケードする。
        • 単一のデータベースを複数セグメントに分割(外からはひとつのDBに見える)。
        • 各セグメントは担当ディスク領域の処理を専任する(=分散処理)。
        • RDBMSは「Greenplum DB」というPostgresベースの商用RDBMS。
        • X4500はSATAディスクを最大48本搭載可能、価格は8桁(JPY)を切る。
        • …というごっついハードウェアの紹介だった。
        • 強いのがどーんとあるとレプリケーションとかテーブル分割とか気にしなくていいから仕事ラクになるんだろうな。

pgpoolの話は実務にフィードバックしたいし、その他のセッションもよそがどうPostgresを使ってるかとか、いろいろ大変なんだよねとか、刺激になったり参考になったりした。

そしてOSSの世界にコミットしてる方のセッションは、どれも前向きで自信に満ち、苦労も楽しく話していた。メンタルな部分でもいい影響を受けたので、仕事に穴を開けた価値は十二分にあったと言えるだろう。