技術評論社から刊行されているRubyの入門書「かんたんRuby」を、著者のすがわらまさのりさんからご恵贈いただきました。


たかまる「プログラミング入門」への需要

プログラミング教育の必修化をきっかけに、プログラミング教育への注目度が俄然高まっています。小学生だけではなく中高生向けの教材やコンテスト、社会人向けのプログラミングスクールなども増加し、プログラミング能力を獲得するメソッドへの需要も急増中です。

自明の罠

ぼくも自社およびグループ会社の研修担当として、エンジニア職以外の新卒にプログラミングを教えてくれ、という依頼を受けて、ここしばらくはプログラミング未経験の新卒たちにJavaScriptの初歩などを教える業務もしています。

手頃なサイズの教材がないため、演習の資料はすべて書き下ろしたのですが…これがまた非常に難しいのです。極限まで噛み砕いて書いたつもりの教材でも、講義を始めると目が点になる新卒たち。すっかり「エンジニアとしては自明」に毒され、初心者がつまずくポイントを見逃してしまいがちで、とても苦労しました。

「かんたんRuby」は簡単だが「かんたんRuby」を書くのは簡単ではない

そんな経験をしたところで本書「かんたんRuby」を読むと、行間に著者の苦労がにじんでいるように見えてきました。

プログラミングを教えるにあたって「かんたん」と「ごまかさない」は多くの場面でトレードオフになりがちです。古の #include <stdio.h> を思い出すのですが、説明が大変かつ本質的でないところは、つい「おまじない」として先送りにされてしまいます。

本書にはおまじないも先送りもほとんどなく、きちんと最初から「ごまかさずに」Rubyを学べるようになっています。章立ての順序がよく考えられており、「おまじない」が極力登場しないよう工夫されています。その上でそれぞれの項目は理解しやすく「かんたん」に書かれているので、ごまかされずに理解を深めることができます。

こういうポイント、研修講師をやる前だったら気づかずに「よく書けた入門書ですね」という感想で終わっていたような気がします。あの経験があったからこそ、本書の苦労がよくわかる…。

もうひとつよいのは、Ruby on Railsについてはスコープ外にしていることです。Railsはものすごく便利なフレームワークですし、Webアプリを作り始めるにはもっとも妥当な選択肢のひとつだと思っていますが、「Railsを学ぶ」ことと「プログラミングを学ぶ」ことには少しギャップがあるようにも感じています。本書はそのギャップを埋めてくれる役割も果たしてくれそうです。

こんな人にとくにおすすめ

  • 研修などで未経験者にプログラミングを教える必要がある人
  • Railsに触れてRubyやプログラミングそのものに興味が出てきた人
  • そしてもちろん、未経験からプログラミングを学ぼうとする人

Rubyはプログラミングを学び始める入り口としても、とてもいい言語です。入門のお供にも、本書があると安心です。

すがさん、「かんたん」ないい本を書いてくれてありがとうございます。そして書評遅くなってごめんね!!!