楽天テクノロジーカンファレンス2008に参加する
タイトルどおり「楽天テクノロジーカンファレンス2008」に参加してきた。去年に続き2回目だそうだが、去年のことはまるで知らなかった。まあ、去年の今頃は勉強会に参加しようなんてことはまるで考えていなかったわけだが。
参加申し込みをしてからずいぶん待ったが、案内メールが届かない。周囲からは「きたー」の声があがりはじめたので不安になり、直接サポートに連絡したら「メールアドレス違ってます」だって。私のタイプミスでいきなり迷惑をかけてしまうことになったが、無事に参加できてよかったよかった。
プログラムは以下のとおり。どのセッションにも激しく興味があるのだが、ここは職業意識を発揮して(?)B会場のセッションを見ていた。
オープニング
開会挨拶 杉原章郎(楽天株式会社 取締役常務執行役員開発部長)
基調講演 まつもとゆきひろ(楽天技術研究所フェロー)
招待講演 最首英裕様(RBC会長/株式会社イーシー・ワン 代表取締役社長)
A会場
Rakuten Geek
Webサービス
チェックアウトプロジェクト
レコメンド&パーソナライゼーション
ROMA&fairy
大規模分散メモリストレージ ROMA
分散処理フレームワーク fairy
Rakuten Global Infra
楽天のサービスを支えるインフラ
国際展開をささえる技術
neXtgen
Rakuten Next Revolution
楽天の今後の開発戦略
開発者のためのフィールド
ジャングル Engineer’s Revolution
楽天テクノロジーアワード
金賞:吉岡弘隆氏
Ruby賞:笹田耕一氏、(株)Preferred Infrastructure
記念講演 楽天株式会社 代表取締役会長兼社長 三木谷 浩史
B会場
コミュニティセッション(PHP)
荒木稔 / memokami
前半は「PHP×携帯サイト デベロッパーズバイブル」から基礎的な内容のダイジェスト
後半はPHP Conference 2008でも発表していた「RVS(リアルタイムビジョニングシステム)」のデモ
感想
この本は仕事でやってるなら必読だと思う。Amazonの書籍総合ランクで瞬間最大風速ながら26位を記録したそうだ。
荒木氏は技術とビジネス両方ちゃんとやっているのがすごい。
nequal/中央大学大学院
PEARの現状
PEARが盛り下がってる。参加するにしてもいろいろ面倒。
でも標準ライブラリとしては現役。
じゃあ盛り上げよう。
openpearを作ってみた
OpenID、subversion、rhacoを使ってる。
誰でもプロジェクトを立ち上げてコミッタになれる。
配布用のPEARチャンネルサーバ、subversionのリポジトリ、パッケージング / 配布支援機能、各種web機能を提供。
CPANのような自由さ、誰もが「俺俺ライブラリ」を気軽にコミットできるような文化をPHPにも定着させたい。
感想
PEARのめんどくささ、メンテナがいなくなって非推奨になっていくパッケージにはがっかりしていたので、すごく応援したい。
なにより「盛り下がってる>自分で何とかしたい」という発想がいい。見習わないと。
なにか出せるコードあるかな?探してみよう。
「テストとのつきあい方」
高橋邦彦(kunit)
テストの重要性をしつこく説いてきた。
設計が正しいかを確かめるにはテストするしかない。
設計・実装・テストはセットであるべき。
テストは「めんどくさい」ではなく、楽しく、そしてプログラマを守ってくれるものであると認識する必要がある。
TDD(テスト駆動開発)のゴールは「動作するきれいなコード」
偉大な書籍(テスト駆動開発入門)は偉大な1行から始まる
常に3つのサイクルを回す
- 汚い・動かない(RED : テストに通らない)
- 汚い・動く(GREEN : テストは通る)
- きれい・動く(REFACTOR : きれいなコードにする)
ユニットテストの範囲
単機能のIN/OUTを確かめるのが単体テスト
一度に複数の機能を相手にしない。
アクションのテストはすでに結合テストの一部だと考える。
感想
テストについては私もエントリしている。でもめんどくさいんだよね…。
「テストしやすいコードを書く」ことがすでにコード品質の向上につながるのは痛感したので、頑張って書こう。
こんな記事もある。何事もバランスが肝心ということか。
ユニットテストを書く工数は確かに痛いけど、いろんなところから仕様変更というのは降ってくる。ある程度以上になると結局テスト書いとけばよかった…なんてことになる。
まずは明日書くクラスどれかひとつに、テストクラスを書いてみよう。
概要
詳細はスライドを…
PHPはだいたいIPv6対応できてる
PEARライブラリもだいたい対応できてる
一部IPv6/IPv4を同時に待ち受けられないライブラリがある(ext/fsockets利用のライブラリ / PEAR::Net_Serverとか)
調査不足>ノウハウ不足なので、とりあえずIPv6触ってみませんか?
他言語の調査も募集中
感想
IPv6、いよいよ他人事じゃなくなってきた…という印象。
こういう基盤の部分を地道にやってくれる人って特に尊敬できる。
自前で書いたコードで影響しそうな部分はあるかなぁ。すぐには思いつかないが。
コミュニティセッション(Ruby)
プラグインLT大会
気になったネタ
CSSを生成するメタ言語
確かにCSSはカオスになりがち
それ使うのか?って機能も満載だが実用性が高く使ってみたいプロダクト
Ruby on RailsでCMSのありがち機能をざくざく作れるプラグイン
携帯にも対応
社内プロダクトだが、近日オープンソース化予定
Physical Computing on Rails / takahasim
GAINERのRails用ラッパプラグイン
Railsがリクエストを受けるとソレノイドがちいさいシンバルを鳴らす
個人的にバカウケ。私にはちいさな夢(おおきなのからブレイクダウンしたもの)があるのだが、入り口はここにあるのかもしれない。
まつもとさんとRailsについて話そう
まつもとゆきひろ氏とRails開発者がタウンミーティング形式での質疑応答
Ruby / Railsについてはnewbieなので質問するところまでたどり着けなくて悔しい。目の前に座ってたのに。
気になったいろいろ
Railsについて
書いたことない
monkey patchingがひどい
それをさせてしまった点について申し訳なく思う気分もある
言語デザイナに対してのチャレンジでもある
将来(Ruby 2.0とか3.0)ではそんなpatchが必要ないようなものにしたい
Merbについて
“matz likes Merb"は話が膨らみすぎ
「多様性は善」だと思うのでRailsに対する選択肢として出てきたのはいい
子育てとプログラミングの両立、モチベーションの維持
Ruby開発の初期は仕事中に行い、家にはPCがなかった>強制的に切り分け
子守などで強制的に引き離されるのはアイデアが出るきっかけになったりするので、長期的に見ればプラスではないか
C会場
コミュニティセッション(Linux)
カーネル読書会番外編
ディストリビューション大集合
Next Movement in Communication
いろいろ感想。
基調講演 まつもとゆきひろ
情報格差が位置エネルギーを持ち、それがビジネスチャンスとなる。
機嫌よくすることで頼りにされ、信頼が生まれ、自分の価値が高まる。
一歩踏み出すことでコネクション(情報 / 人)が生まれる。
これらを実現するのにオープンソースは適したフィールドである。
以前パソナテックカンファレンス2008でも講演を聴いたのだが、まつもと氏の話はほんとうに面白い。
B会場
PHPとRubyでだいぶ人が入れ替わっていた。私もRuby / Railsはニワカなのだが、両方見るといろいろわかって楽しいとアピールしたい。
PHP組は時間が押して巻きが入る中、ざくざくスムーズに進行していた。
RailsのLTは時間切れが多かった。ネタはいいのでもったいない。
テクノロジーアワード / 記念講演
世間的なイメージと違い、楽天は技術を中心に据えた会社作りをしてきた。
>私も「スーツ寄りの会社」だと思っていた
インターネット上でのサービス提供は社会的責任が大きくなっている。止まらない / 復旧が早いシステムを構築する必要あり。
エンジニアは技術力はもちろん、担当していることへのオーナーシップとビジネス的視点を持つべき。
これから伸びそうなもの:スマートホン、動画配信(テレビに取って代わる)、アメリカ発でないビジネスモデル。
金・銀・Ruby賞に仕込まれたネタは、どのぐらい認知されてるんだろう。若者は知らないよね、「金銀パールプレゼント」と歌う洗剤のCM。
金賞の吉岡氏はもちろんだが、インフラ本の著者に銀賞というのもすばらしい。
懇親会 / その他
食事が「無料」「おいしい」という噂でおなじみ、楽天の社員食堂で懇親会。料理が大変うまかった。これが毎日出てるの?無料?
勇気を出して名刺交換。同僚のコネクションにのっかることで何人かとお話でき、そこではずみをつけてさらに広げることができた。
三木谷社長と名刺交換。懇親会場を回り、気さくに参加者と話をしていた。さらっと書いたが大汗をかいた。素晴らしいイベントだった、開催に感謝している、って直接伝えられたのが光栄だし嬉しい。
吉岡弘隆氏と名刺交換。ロールモデルとして憧れている方なので大変嬉しい。私の拙いLTをUstream配信で見て、しかも覚えていてくださったのに感動。
各セッションで質問できなかったので今後の課題。
スタッフとして各所で働いていた楽天社員が、みんな気持ちのいい応対をしていた。
楽天という会社(もしくは三木谷社長)のファンになった。単純さっぱり野郎といわれればそのとおりだが、そのぐらい素晴らしいイベントだった。
そうだ、私の手にも「ソフトウェアを作る力」があるんだった。
長い上に逸脱してきたのでこの辺で。もちきれないぐらいの精神的お土産をもらったので、よく咀嚼して、これからの行動の糧にしていきたい。