創る心とおもてなし―第1回 Webエンジニア料理対決に参加する
3/27(金)、クックパッドのオフィスで行われた「創る心とおもてなし―第1回 Webエンジニア料理対決」というイベントに参加してきた。定員20名という狭き門だったが見事当選し、仕事を半ば放り出すように白金へダッシュした。
クックパッドのオフィスは去年の勉強会以来2回目。昨年4月に外苑前から移転して以来、各所で話題沸騰のすごいオフィス。私も前回の訪問で完全に魅了されてしまった。あのすごいオフィスにまた行けて、しかも今度は料理しているところまで見られる。なんてすばらしいイベントなんだろう。
第一部:エンジニア料理対決
参加3チームによる料理対決。Ustream経由でインターネット中継された。
テーマは「フライパンを使った料理」。クックパッドユーザの声で開発された「ニコパン」を使うのも目的のひとつ。
シェフの副島さんが解説兼審査員として特別参加。ずいぶん手伝っていたように見えた。
観客はかなり自由にさせてもらった。「麦とホップ」などを飲みながら近寄って写真撮ったり、クックパッドの方と話したり、観客同士で話したり。いきなり懇親会が始まったかのようだった。
各チームの料理と感想は…
クックパッドチーム:
CTO橋本さんも含めたエンジニア主体のチームだが、みんなやけに手つきがいい。餃子の具ごとに巻き方を変えるなんて、普段やってなきゃできない芸当。
時間に余裕があったのでもう一品「紫蘇アジャイル餃子」を追加。皮の外側をさらに大葉で巻くのは見たことがないやり方。今度マネしてみよう。
味はすばらしかった。できればできたてをおなかいっぱい食べたい。
Yahoo! Japanチーム:
中身がケチャップライスとコチュジャンライスの2通りで、どちらもホワイトソースがかかる。
中身がピリ辛のオムライスというのは新鮮。ホワイトソースとも意外とマッチしていた。
作業エリアが奥のほうだったため、手つきがあまり見えずに残念。
リクルート メディアテクノロジーラボチーム:
具の種類をたくさんそろえたタコス。かなりいい肉、海老、チリコンカンなど。
ソースも辛いものと辛くないものが用意され、トッピングとして「砕いたポテトチップス」まで用意してある。
味は食べる人の好み次第。webサービスもいろいろ用意するので使い方は好み次第、というポリシーを体現したメニューだった。
第二部
各チームによるライトニングトーク
「経験から語るWebサービスの心得(モノづくりとおもてなし)」
「おもてなし」というテーマでのプレゼン。5分間、延長なしといった厳密なルールではなかった。
Yahoo! Japan
一条 裕仁
Search Monkeyという新サービスについて紹介。
検索結果にメタデータを埋め込んで表示する機能を提供するプラットフォーム。
米Yahooでは昨年5月ローンチ済み。
サイトオーナーがMicroformat、RDFなどでメタデータをドキュメント内に埋め込むことによって、自サイトの検索結果をカスタマイズできる。
サイト管理者 – プラグイン開発者 – 検索エンジン利用者が「お互いにおもてなしをし合っているシステム」。
日本での公開に向けて調査中。
リクルート メディアテクノロジーラボ
寺井 修平
メディアテクノロジーラボでの開発実績紹介。
一番大きく取り上げたのが「旅箱」。
「ラボ」の名前の通り、実験的なサービスを作れというオーダーが多い。旅箱の場合は「ユーザが投稿した写真を面白く見せる方法を」というオーダーだった。
さまざまなサービスを通じて、その上で遊んでもらうことを「おもてなし」として提供している。
張り切り過ぎない、俺のを見ろといわない、作り手の意思を押し付けない。
クックパッド
根岸義輝
クックパッドでの開発手法のひとつ「EOGS」を紹介。
ユーザの欲求に基づいたゴールを設定する。
- そのサービスに関わるキャストを立てる
- キャスト毎の疑いようのない欲求を理解する
- 解決方法を探す
- すべての解決方法を満たす方法を探す
「ユーザの欲求を解決する開発」、「たべるひとを幸せにする料理」。どちらも「おもてなし」に通じる。
各チームのリーダー+技術評論社 馮さんによるトークセッション。
あらかじめざっくりしたお題は用意してあった。
テーマごとに印象的だったコメントをいくつか。
発言者については敬称略 / 略号にて失礼。
G:馮(技術評論社)
C:橋本(クックパッド)
R:川崎(リクルート)
Y:澤田(Yahoo!)
今回のイベントについての感想
C:料理好きのおエンジニアは意外と多い。クックパッドのポリシーと料理は親和性が高い。
G:社内から危ぶむ声も受けたが開催してよかった。
プログラミングと料理の共通点
R:サービスを提供し続けることがおもてなし。
C:ゴールをイメージすることが大事。
Y:レシピ = 設計 / 作業 = 実装。片づけまでが料理で、ドキュメント / コード整理までがプログラミング。
おもてなしの考え方
C:相手をどこまで理解できるか、相手の立場で考えられるか。「EOGS」などは気持ちが悪くなるぐらい真剣に考える。
R:サルサソースを2種用意したように、選択肢を増やすこと。コミュニケーションが生まれやすいものを提供しようとしている。
Y:お客さん視点をシンプルに、コアをきちんと作る。高度な機能を作りこむことに拘泥しない。フィードバックを重視する。
技術と心
R:百聞も一見もワンタッチにしかず。新しい技術はまず触って、手を動かして習得しよう。
C:「やりたいこと」かどうかが重要。モチベーションの有無は10倍、100倍のパフォーマンス差をもたらす。
Y:技術は適材適所。新しい技術で作ること、枯れた技術で安定したものを作ること、どっちも大事。
質疑応答
Q:マネタイズとおもてなしのバランスはどうやって取る?
一同:難しいよねー
C:コミュニティは規模が重要。クックパッドは会員数が100万を越えたあたりからいろいろうまく回るようになった。
Q:技術を突き詰めることで「おもてなし」につながった例はある?
Y:Search Monkeyはまさにそう。今は言えないが準備中のプロダクトでもそういうものはある。
R:パパパメーターRのように、技術Drivenでものづくりをすることが多い。できたものをプランナーが見ることで新しい使い道、新しいビジネスが生まれることもある。
C:「技術・非技術」という考え方がない。Ruby on Railsなどアーキテクチャだけはなく、「EOGS」など開発手法 / ポリシーもすべて「インターネットというツールを生活の道具にする」というゴールのための「技術」である。
クックパッドのオフィスに行ける、美味しいものをご馳走になる、すごいエンジニアの話を聞ける、という素晴らしいイベントだった。帰りにちょっとしたお土産をいただいたのだが、何よりも心に響く言葉をたくさんいただいたのが最大のお土産。特にクックパッド橋本さんの「アーキテクチャだけが技術じゃない」という考え方には、頭を掴んで揺さぶられたようなショックを受けた。そうだよな、まず実現したいゴールありき、だよな…。
帰り道、自然教育園の桜を見ながらいろいろ考えていた。仕事を楽しくする方法は、きっとあるはずだと。
「第一回」とタイトルについてるので、第二回の開催も楽しみにしている。
http://gihyo.jp/event/2009/cooking
●みんなの仕事場 – 料理で笑顔を増やす会社の大きなシステムキッチン【クックパッド株式会社】
http://shigotoba.askul.co.jp/Edetail/index/e/1649fd7cd0/