エンジニアの未来サミット 0905に参加する
5/23(土)、「エンジニアの未来サミット 0905」に行ってきた。参加希望者が多くて抽選になり、申し込んでいた同僚の中でも明暗が分かれたこのイベント、私は幸いさっくり当選することができた。
そして、競争率の高さもむべなるかな、という濃厚なイベントだった。
構成は大きく二部で、どちらもパネルディスカッション。どちらも濃い口のパネラーがアツく語る、大変見ごたえのあるセッションだった。
どちらかというと第一部は真面目な / 第二部は砕けた雰囲気で話が進んだ。内容そのものはそのうち動画が公開されると思うので、ここでは個人的な感想と気になったフレーズをベースにレポートしたい。例によって以下敬称略で失礼する。<>(全角不等号)で苗字を囲んである部分は発言者である。
オープニング
前回は学生向けだった
→講評だったがニーズとの差異があった。
今回は「アルファギーク」をメインに
→質疑応答もあるのでお楽しみに。
第一部:
おしえて!アルファギーク ─ エンジニアが幸せになる方法
パネラー
自己紹介
<吉岡>
いちばんおじさん。ITの動きを一番つぶさに見ている立場。
<谷口>
非IT業界から入ってきた立場として話したい。
<楠>
ライターをやりたかったが、中途でMSに入社した。
<ひが>
SIerとしていいところ / 悪いところを見てきて、今はOSSを書くことが仕事になっている「恵まれた立場」。
人生の転機 エンジニアの転機
<吉岡>
自分の意思さえあれば自分のキャリアをデザインできる
10年前、日本にRDBMSを書く、という仕事はなかった。
今は意志(とインターネット接続)さえあれば開発に参加できる。
RubyのMLなんか日本語で流れている。
<谷口>
社内に憧れの人がたくさんいる環境で働けたのがラッキー
shibuya.pmにめぐり合った
→オンザエッヂの人が盛んに活動していた
→この人たちと働きたい
ロールモデルとして宮川さん(現Six Apart)を目標にした
→CPANへのコミットとか
<楠>
コードでは解決できない問題に取り組んでいる
無線LANへの周波数割当が足りない、などはコードを書いても解決できない。
ここ数年、MSもOSSへの取り組み方を変えている。
技術だけじゃない問題にコミットしていける立場 / 会社が面白い。
<吉岡>
「blog書いてる人は?」(会場に質問)
→半数以上挙手
「勉強会への参加経験者は?」
→ほとんど挙手
- 君たちはふたつの大きな武器を持っている!
<ひが>
blog書くのは嫌い。コード書くのもそんなに好きじゃない。
子どものころから文章は苦手、著書も読み返したくない。
頼まれる、頼りにされると断れない。
文章で、プログラムで、人の役に立つのが好き。
<楠>
blogを書くことで物事を納得できる方向に近づけていける
「間違った記事を指摘される」ことより「記事にしないので間違ったまま」のほうが恐ろしい
味方はどこにいるかわからない
→問題点を指摘した記事を官僚が読んで改善していた、なんてこともあった。
<ひが>
SIerとしては評価されなかった
上流工程でそれなりに成果を出しているつもりだった
→社内での評価はそうじゃなかった。
Seasarを作り、OSSとして公開した
- 外部の人といっしょに開発する
- プログラミングで社会に貢献できる
- 適正があると感じた→力が発揮できる
スキルと仕事のマッチングが重要
→力を発揮できる場に行かないと貢献できない、評価されない
→勉強会などでそれを見つければ幸せへの道
<吉岡>
どうやって向いてることを見つけたらいい?
<ひが>
やってみるしかない。向いてることならきっと続く。
<谷口>
自分が求めていたものがそこにあった
ゆるゆるの会社でそこそこの給料をもらってた
→Shibuya.pmに影響されてライブドアに入社
給料は激減、仕事時間は激増
→毎日終電、節約生活
楽しいから続けられた
<よしおか>
情報発信している人の周りに人は集まる
学生も企業情報を共有している
→ブラックな会社なんてすぐバレちゃう
情報の非対称性が解決されつつあるように思う
質疑応答
Q:受託開発における上流と下流 / 元請と下請の格差はどうなる?
<ひが>
上流 / 下流「どちらか」しかやっていないエンジニアはダメ
実装がわからない人の設計は問題を後に送っているだけ
実装しかやっていない人は設計の意図を汲み取れない
ゼネコン形式は効率が悪い
(分業によって)部分的なことしか見ていないケースが多い
修正が増える
結合で破綻してデスマーチ
「上流 / 下流」のようなわけ方の分業はよくない
→上から下まで全部できる会社がこれから強みを発揮するのでは
→コスト面でも品質面でも
<楠>
多重請負は最近減っている
大手SIerのコンプライアンス、内部統制を意識するようになった
→改善の方向に
情報発信の時代になった
→コキ使うと優秀な人材が流出する
Q:メンタルヘルスの問題はどうなる?
<谷口>
非常に気になる質問
→ヤバいと思って自己診断してみた
→どう見てもうつ病です。本当にありがとうございました。
人がいろんなものを犠牲にする開発体制だった
→限界を感じて退職を申し出たら別部門へ回してくれた
→逃げなきゃ自分の中で解決されなかった
国民性を利用している会社が多い
→空気読んで残業しちゃう
近い将来、何とかしないといけない問題
落ち込んだ部下をコントロールできない
メンヘルをマネジメントするノウハウがない
業界がかわるか、マネジメント層がノウハウを手に入れるか、個人が変わるか
メンタルケア・カンファレンスをやりたいぐらい
<よしおか>
経営もプロフェッショナルな技術である
そういうことを学ぶ場があってもいい
人間を管理する「技術」を学ぶ必要がある
形式知として共有されてないからまずい管理方法が横行したりする
北風と太陽
→太陽が人を動かす
会社として「意識してこき使ってる」はないんじゃないか?
→「たまたま」上司がまずいとか部下がまずいとか。デスマ折込済み、なんてのはほとんどないはずでは?
<ひが>
身の丈に合わない仕事を受けちゃうのが原因
<楠>
見積もりは間違うもの
不確実性を共有しないといけない
契約の仕方を変えるだけでも回避できるのでは
エンジニアの未来 ITの未来
<ひが>
クラウド
GAE/J、Amazonなどの提供するクラウドサービスでビジネスとしての価値(コスト減)が見えてきた
SIerの非効率がソフトウェア開発に向かなくなる
→小さなチームですばやく開発、売れたらクラウドでサクッとスケールアウト
<楠>
SIer / 受託開発はなくならない
人とシステムの仲立ちをする仕事はなくならない
ユーザ企業の中ではエンジニアのキャリアパスを用意できない
雇用の調整リスクをSIerが肩代わりしてきた
→「いろんな会社のIT部門」という存在はそうすぐにはなくならない
<谷口>
業界がそんなに変わるとは思わない
心を病んでまでずっといるべきところか?
→ブラック企業はある程度淘汰される
会社に未来がないからエンジニアに未来はない?
→そんなことはない
IT業界サバイバルが始まっている
Shibuya.pmの募集枠がすぐ埋まる
→エンジニア人口が急激に増えている
会社も増えている
→一発ヒットで大きくなれる
→大きくなったサービスを運用する方法論も共有されている
会社の生存競争が激化するんじゃないか
<吉岡>
東京はじまったな
カーネル読書会が10年続いた
→カーネルを読むなんて物好きがいるのか?
→いっぱいいた
バタラさんのMySQLの使い方の話は衝撃だった
→社外にある強みをサービスの根幹に取り入れている
会社の外にロールモデルはいる
→技術を共有することはブルーオーシャンへの道
基盤系の技術を10年やれば第一人者になれる
→未来はある
<ひが>
クラウドという新しい技術が出てきた今はチャンス
先輩にもノウハウがない横一線の状態
今からやればトップになれる可能性もある
<谷口>
第一人者になりやすい時代
ライブドアの裏側の話をコードレベルで雑誌に書いた
→すでにそれも陳腐化し始めている
ちょっと前までの先行者がすぐ追い越される時代
後発だから…とネガティブにならず、チャレンジしよう
質疑応答その2
Q:10年後、20年後に出てきてほしいエンジニアとは?
また、そうなるための第一歩としてやってほしいことは?
<谷口>
「世界に名だたるスーパーハッカー」(笑)
東京は技術が集積した街である
あと1~2年で世界に発信できるものができてくる
そのためにもいろんなことにチャレンジしてほしい
<楠>
幸せなエンジニア
ロールモデルになれる、人にうらやましがられるエンジニア
不況と少子高齢化で見通しの悪い時代
→大きな変化は見通しの悪い時代に出てくるものである
<ひが>
「日本は立ち直れない」とか海外から言う人をギャフンと言わせる人になってほしい
<吉岡>
東京始まったな、日本始まったな
すごい人がたくさんいて日本語で話し合える
10年前に妄想した世界が実現した
福岡とか島根とか、地方でも勉強会のムーブメントは起きている
→地方は絶対的な人数が少ない分、多彩な種類の人間が集まる
Q:就職活動をしていても「IPAフォーラム」のような空気になることが多い。
情報系の学校の存在意義は?学生は何をするべき?
<吉岡>
日本で偉くなるのは「失敗しない人」
勉強会に来るような人はすでに情報感度が高い
→「資格取ればいいよ」みたいな発言に惑わされない
最低限のスキルを担保するものとして、資格には最低限の価値がある
<谷口>
資格の有無は気にしない
偏った考え方を大人たちが押し付けるのはよくない
適当に選んだ学校・学部を出ている大卒より目的を持って高専・専門に進む人は評価できる
<楠>
就職活動においては基礎として持っておくと有利、との声あり
業界によっては資格の有無で足切りされることもある
→自分の行きたい業界を調べよう。ググれば誰か書いている。
<ひが>
IPAフォーラムは「老害とは何か」を知る場だったんだよ
感想
- まったくキャリアの違う、でも現在第一人者として活躍されている方が忌憚なく今後について語ってくれるセッションだった。内容濃すぎ。
- このイベントがあっという間に満席になり、参加者は抽選で選ばれるという盛況っぷり。こういう素晴らしい状態が産まれるにあたって、吉岡さんの功績は計り知れない。
- ひがさんの衝撃発言がいろいろ聞けて楽しかった。そして、「人の役に立つのが好き」という気持ちがモチベーションの素になっていることに強く共感した。
- 谷口さんのお話を聞くのは初めて。異業種から移ってきたこと、「とにかく楽しいからがむしゃらにやった」ことに共感。「メンタルケア・カンファレンス」期待してます。
- 楠さんのお話も初めて聞いた。「コードでは解決できない問題に取り組む」という話にハッとした。「情報」という単語を取っ払った「システム開発」ということか。
第二部:
弾 vs. 個性派エンジニア ─ サバイバル討論
パネラー
気になったフレーズ
<山崎>
「非プログラマもエンジニア」
→もの作るのは気持ちいいが、トラブルシュートに生きがいを感じるエンジニアもいる。
<高井>
「勉強会に勉強しに行くのは素人」
→発表してこその勉強会。
<高井>
「26歳が一番頭いい説」
→自分に合った学習のメソッドを確立することが重要。
<山崎>
「責任感が強い人のほうが成長が早い」
→何とかしようと頑張ることでスキルアップできる。
<井上>
「スイッチの押し方を知る」
→ここを押されたら自分は動く、というポイントを知り、うまく使う。
<閑歳>
「Perl講師のアルバイトに応募してから参考書を買いに行った」
→一週間で書けるようになった。時にはハッタリ重要。
<弾>
「失敗はしたことがない」
→今こうして生きているということは致命的な失敗はしていない。失敗に見えることも成功へとつなげてきた。
米林
「金の話のできるエンジニアになれ」
→「いいコード」を書いても評価されない、給与が上がらないのは、そのコードがもたらす価値を見極められていないから。
パネリストからのメッセージ
<山崎>
「非プログラマもエンジニア」
→もの作るのは気持ちいいが、トラブルシュートに生きがいを感じるエンジニアもいる。
<高井>
「好きこそ物の上手なれ」
<山崎>
「一回きりだし、必死にがんばりましょう。
そしたらなんとかなるよ。」
→うまく行くのは必死にやったとき。
<閑歳>
「先が見えないことを楽しむ」
<井上>
「自重しるwww」を目指す
米林
「愛札」(あいさつ)
→愛:家族、友人 / 札:自分の価値
<弾>
「Make & Make Sense」
感想
- これ以上脱線すると収拾つかない、というタイミングでモデレータの馮さんがコントロールして本題に戻る、という絶妙な進行。
- 弾さんが入場者証のシールをメガネのツルに貼り付けていたのだが、誰も突っ込まなかった。紳士協定でもできていたのだろうか。
- 井上さんがなんだかスゴい若者だった。オンラインコーヒーメーカー「萌香たん」なんか仕組みを聞けばああなるほどと思うし私でも作れる(たぶん手持ちの材料でいける)が、それはただ1をコピーしただけ。「0を1にする能力」というのはすごいなぁ。
- 山崎さんの発言には深みがあって納得させられた。小一時間説教してほしいぐらいである。
- 閑歳さんの「作ったサービスで誰かとつながるのが嬉しい」という言葉に強く共感。作ったモノはやっぱり、使ってもらってナンボだよなぁ。
- 高井さんの「勉強会に勉強しに行くのは素人」に爆笑。よくぞそこまで言ってくれました。そして、それが真実だと知っている私が通りますよ。
- 米林さんのまとめの言葉「愛札」は非常にうまい。ちゃんと技術を持ってる前提で、家族や友人を大事にし、現実的な価値を生み出すエンジニアであるべし、という当たり前ながらなかなかできないことを一言で表現している。ちょっと写経してきます。
ということで半日みっちり話を聞いてすっかり影響されたり疲れたりする、充実のイベントだった。スポンサーであるパソナテックのスポンサーセッションがぶっちゃけ話満載で非常に面白かったので、仮登録してQUOカードをいただいたり、担当の方と名刺交換してきたりした。
●0905:エンジニア・サバイバル | エンジニアの未来サミット … 技術評論社
http://gihyo.jp/event/01/engineer/0905