Time to play the Role Playing Game – 書評「Team Geek」
「Team Geek」を読んだのでその雑感を書いておく。発売からしばらくして電子書籍版が出たので、こちらを読んでみた。
エンジニアとコミュニケーション
最近は減ったのだろうか?私が(ゲーム以外の)ソフトウェア開発の世界に出てきた8年前は、わりと結構な頻度で「人付き合いよりコードを書く方がいい」というエンジニアに出会った。「コミュ力がいらないから、エンジニアを選んだ」という人さえいた。
確かに、エンジニアにコミュニケーション能力は不要だろう。自分のアウトプットを自分で売って自分が食っていくことができるのなら。
ちょっとでも他人の力を借りる必要があるのなら、それは「チーム」であり、コミュニケーションが発生する。その上で、チームの「メンバーとして」「リーダーとして」「マネージャーとして」どう振る舞うべきか、というのが本書「Team Geek」のメインテーマである。
メンバーとして
一握りの例外をのぞいて、俺たちは天才ではない。ひとりで完全なものを作れない以上、チームで働く必要がある。そのとき最も大事なのが「HRT (Humility:謙虚 / Respect:尊敬 / Trust:信頼)」だ、というお話。
別にエンジニアに限った話じゃなくて、チームで働く以上欠かせない姿勢だけれど、特に(俺は天才だと思いがちな)エンジニアにとっては、もう一度自省すべき態度だろう。
同時に「You are not your code」という態度も身につける必要がある。「コードを憎んで人を憎まず」というヤツだ(超意訳)。人には敬意を払い、コードはよりよく。
リーダーとして
HRTを備えたチームを作るには、リーダーの力が欠かせない。いろんな人間がいて、いろんなプロダクトがあるから、いろんなームができるだろう。でも、チームを方向付けるのはそのチームが備えた「文化」であり、文化を守り育てるのはリーダーの大事な仕事だ。なぜなら、「類は友を呼ぶ」から。
その点で、本書が一番貴重なのはこの部分だ。メンバー向けの本もマネージャー向けの本もたくさんあったが、エンジニアのリーダー向けの本はあまり見かけない。
HRTを備えて、その上でチームを引っ張り、文化を育む。これがリーダーの仕事だ。
マネージャーとして
マネージャーについての記述は、ごく普通のことに終始している。「管理者ではなくサーバントであれ」とか、エンジニアの言葉とは違う言葉で話すこととか、チームを育てたり守ったりすることとかは、最近のマネージャー向けな本にはだいたい書かれている。本書の特色は、それを「エンジニアにわかる言葉で書いた」ということだろう。
エンジニアがマネージャーになる(ならされる)ことは珍しくないだろう。ギークでいたいなら、ギークのチームを育て守りたいなら、マネージャーの世界の言葉もわかるようになるべきだ。
プランB
「正しいことをして、解雇されるのを待とう。」というフレーズが紹介されている。
できることが残されていないなら、あとは被害者にならないように、そこから逃げ出そう、とも書かれている。
逃げ出す準備ができているのといないのとでは、問題に対面するときの気分がまったく違う。私は期せずしてジョブホッパーになってしまったが、それでも「サービス残業することが価値だ」と言われる環境から躊躇なく逃げ出せたのはとても幸運だった(もちろん相応の準備はしていたけど)。
メンバー / リーダー / マネージャーとして、残されている「やるべきこと」は多様だ。だが、常に「プランB」のことを念頭に置いておこう。「逃げ腰で臨む」ではなく「選択肢を用意しておく」という意味だ。そして、選択肢を用意することは、そのままスキルアップにつながる。
だって、仕事でしょ?
メンバー / リーダー / マネージャー、どのロールで仕事をするにしても、本書は「理想的なふるまい」についてアドバイスしてくれる。自分が理想的なメンバー / リーダー / マネージャーでないなら、そのふるまいを演じることによって、理想的なメンバー / リーダー / マネージャーに近づけるのではないだろうか。
そんなエンジニアの振る舞いを、短く軽快に、そして深く優しく書いてくれているのが、「ロールプレイングゲーム」というテキストだ。「プログラマが知るべき97のこと」(通称「きのこ本」)の日本語版に収録されている。
「Team Geek」で、理想のメンバー / リーダー / マネージャーの振る舞いは紹介されている。読んだら、明日からは…
「お仕事中は淡々と理想のメンバー / リーダー / マネージャーを演じてみましょう。本来の自分を変えるより、ずっと簡単です。迷ったら仕事だと思ってあきらめて演じてください。だって、仕事でしょ?」
まとめ
- 「Team Geek」、ソフトウェア開発チームに関わる仕事をしているなら一読の価値あり
- 「HRTを備えた理想のチーム」に、自分のロールで貢献できるような日常生活を送ろう
- 「理想のロール」を演じよう・・・だって、仕事でしょ?